結婚してから、私には「自分の部屋」がなかった。あるのは仕事部屋と子ども部屋、夫婦の寝室。独身時代のような、自分だけの空間は、もう何十年も持っていなかった。
夫と私は、趣味も嗜好もけっこう違う。寝る時間も、起きる時間も、聴きたい音楽も。今まではお互い譲り合って折り合いをつけてきた。家族だから当たり前だと思っていた。でも、心の隅にずっとあった。もう一度、自分だけの部屋を持ちたい。
60代でダウンサイジング。一軒家から中古マンションに住み替えた。買ったのは「2LDK」のメゾネットタイプ。1階にLDK、2階に洋室2部屋とベランダ、洗面、トイレ、浴室、という構造だ。
でも私たちは、夫婦それぞれの個室を作りたかった。

「リビングって本当に必要?」という疑問が出発点だった。子どもが巣立って夫婦2人の生活になり、テレビを見るためにリビングに集まることもなくなって、ソファを使うのは猫と夫が昼寝するときだけ。
それならリビングをなくして、それぞれの部屋を作ろう。メゾネットという構造を活かして、1階を私、2階を夫、という配置にした。
理由はシンプルで、距離感だ。同じフロアで襖一枚隔てただけの個室より、階が違うほうがお互いの空間として独立する感じがある。気配はあるけれど、干渉はしない。そういう距離が欲しかった。
そして1階のキッチンダイニングとつながっていた空間に、間仕切りを作ってもらった。
4枚の引き戸で、リビングを自分の部屋に変えた
間仕切りをどんな形にするか、最初はあまりイメージができていなかった。「壁を作る」というと完全に塞いでしまう感じがして、なんとなく圧迫感が気になっていたのだ。
リフォーム業者さんと相談して決めたのが、すりガラス調PCパネルの4枚引き戸。

これが正解だった。
ポリカーボネート製なので、軽くて光が通る。閉めていても向こう側の明るさが伝わってきて、圧迫感がない。木枠との組み合わせも気に入っている。和モダンというか、温かみのある雰囲気になった。
そして引き戸を開ければ、ダイニングと私の部屋がひと続きになる。夏場の食事どきは、私の部屋のクーラーの風があたるように開け放つ。開ければ解放感、閉めれば私だけの空間。この切り替えができるのが、思っていた以上に快適だ。


費用は約45万円。建具は一から製作してもらったので、その分のコストはかかったが、見た目も機能も大満足。これはお願いして本当によかった。
自分の部屋の壁紙は、くすみベージュの石目調に
リフォームで楽しかったことのひとつが、壁紙選びだった。
以前の一軒家のときは、壁紙は無難な色を選びがちだった。誰が見ても文句を言わない色。でも今回はずいぶん考えて選んだ。
選んだのはサンゲツの型番RE55901。くすみベージュの落ち着いた石目調にした。真っ白より少し温かみがあって、狭い部屋に長い時間いても圧迫感なく疲れない色。自分が一番落ち着ける色って何だろうと、たぶん人生ではじめて考えた。

クローゼットの壁紙は、大胆なものを選んでみた
もうひとつ、押し入れをクローゼットに変えた。棚板を撤去して、ハンガーパイプを取り付けて、壁紙を貼る。それだけの小さな工事だ。でもこれが、思いのほか気分の上がる空間になった。
壁紙は、ちょっと派手な黄色い花柄にした。

クローゼットの中だから、扉を閉めていれば誰にも見えない。家族にも、来客にも。でも毎朝、服を選ぼうと扉を開けるたび、その花柄が目に飛び込んでくる。それだけで、ちょっとテンションが上がる。
部屋の壁紙は落ち着いたベージュにしたぶん、クローゼットの中はあえて思い切った。見えない場所だからこそ、好きなものを。これが壁紙選びで一番楽しかった発見だ。
60代で、久々に自分の部屋を持った
リフォームは決して小さな金額ではない。でも、毎日この部屋で過ごしていると、やってよかったと心から思う。
朝起きて、好きな壁紙に囲まれた自分の部屋にいる。ダイニングで夫と食事をして、食後はそれぞれの部屋へ。私はキッチンのすぐ隣でお茶を入れながら、好きな音楽をかけて、好きなことをする。階が違うので、お互いの気配はあるけれど干渉しない。
誰かに見せるための場所じゃない。説明しなくていい場所。折り合いをつけなくていい場所。
結婚してから何十年も「自分の部屋」を持っていなかった私が、60代にしてようやく手に入れた空間だ。
リフォームでお金をかける場所は人それぞれだと思う。でも「自分の部屋を作る」ことに使ったお金は、暮らしの質に直結する投資だったと、今は確信している。

部屋の骨格ができたら、次は家具だ。6畳の狭い部屋に何を置いて、どう使っているか。新しく買ったものも、長年使い続けているものも、全部混ぜながら自分の部屋を作った。その話は次の記事で。
🐾 おまけ~うちのハチワレさん

猫は狭いところが好き。箱や袋の中だけではなく、折りたたまれた新聞、本、ぞうきん、洗濯物などの上にでーんと座って、しばらく動きません。まるで陣取りゲームのよう。彼女たちが飽きて移動してくれるまで、こちらはひたすら待つのみです。


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